「推し」、あなたにはいますか?その人、そのグループ、はどんな存在ですか?
私にもずっと応援してきた「推し」がいて、このタイトルにはどうしても惹かれるものがありました。
推し、燃ゆ。推しをもつ私には、単純な興味とともに恐怖を感じてしまうタイトルでした。
読むと、思った以上にディープな物語。感想をまとめました。
- 芥川賞受賞のこの作品、とっても話題になっていて気になったから
- 私にもいる「推し」の存在、そして私のようなファンをどう描くのか興味があったから
書籍情報・あらすじ
書籍の基本情報
書籍名 | 推し、燃ゆ |
---|---|
著者名 | 宇佐見 りん |
出版社 | 河出書房新社 |
出版年月日 | 2020年9月10日 |
頁数 | 128ページ |
あらすじ
逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を”解釈”することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し――。デビュー作『かか』が第33回三島賞受賞。21歳、圧巻の第二作。
引用:推し、燃ゆ 詳細ページ
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本を読んだ感想
あかりにとっての推しの存在
作品の詳細部分の引用を見ると、「逃避でも、依存でもない」とありますね。
私はここを読むまで、あかりの推し方はそのまま逃避であり、依存であると思っていたんですよね。
でも、そうか。
作品中で推しの存在があかりの「背骨」と表現されているように、もうそういう域を超えているってことですね。
あかりは推しである上野真幸に寄りかかって自分を立てているというより、それがないともう生きているとはいえない、それが当たり前のように自分の中にあって一体化している。
依存よりも、逃避よりも進んだ、いってしまえばもっと重度の推しかたをしているのです。
病的ともいえるし、はたまた崇高にも感じられてしまう…とにかく、ファンという域からは遠く離れています。
あなたには、推しという存在はいますか?
私には推しがいます。今はそれほど熱心な推し活はしていませんが、数年前まではそりゃあもう追いかけていました。
あかりを見ていると、自分の推しかたとちょっと違うなというのがまず感じたことでした。
推しに会うために、嫌なことも頑張る。推しを応援するため、商品を買うために働く。
深く理解したいからあらゆる媒体の推しを追うし、研究者のように何度も同じものを見て読んで解釈する。
あかりの推し活には共感できる部分も多いけれど、あかりほど自分という存在が消えていたかというとそうでもない。
むしろ、推しの存在が励みとなって自分の生活もちょっとしっかりするような、そんな推し活になっていました。
あかりにとって上野真幸は、生きづらい世界の中で子どもでいることを許してくれる存在。
意識そのものを預けて、今をなんとかやり過ごさせてくれる存在。
そう、上野真幸はそのままあかりに取り込まれ、それと同時にあかり自身を預けるいれもののようになっています。
自分を壊し、背骨を拾う
上野真幸は芸能界からの引退を発表し、あかりの目の届かない普通の人になります。
明言されていないけれどおそらく結婚し、一般の、普通の人として生きていくのでしょう。
あかりはもう、彼を追い解釈する生活を送ることはできません。
投げつけて床に散らばった綿棒を拾う行為は、推しが人を殴ったときと似ていますね。
推しが自分の世界を壊すのと同じように、あかりは自分の背骨を壊し、それを拾うところからとりあえず始めてみることにしたのです。
あかりはこれからどう生きる?
先ほどの興奮で痙攣するようにうごめいていた内臓がひとつずつ凍りついていき、背骨にまでそれが浸透してくると、やめてくれ、と思った。やめてくれ、何度も、何度も思った。何に対してかはわからない。やめてくれ、あたしから背骨を、奪わないでくれ。推しがいなくなったらあたしは本当に、生きていけなくなる。あたしはあたしをあたしだと認められなくなる。冷や汗のような涙が流れていた。同時に、間抜けな音を立てて尿がこぼれ落ちる。さみしかった。耐えがたいさみしさに膝が震えた。
引用:『推し、燃ゆ』
あかりにはこれから、別の推しが現れると思いますか?
私は、きっともう現れないと思います。
あかりは自分の背骨をいったん自分で壊し、それを拾うところからやっていこうとしています。
すべてぶち壊したいと思ってもせいぜい綿棒の箱を投げるくらいしかできない自分、小さくてくだらない可哀想な自分とやっと向き合うことになったのです。
ピーターパンをきっかけに推すことになった彼とはお別れして、あかりはネバーランドから脱出するしかない状況になってしまいました。
上野真幸がひとりの人間、自分と同じ小さな人だって実感したら、苦しくても今度は自分に目を向けるしかないですよね。
これから生きにくさを直視することになるあかりが、生ける屍のようではなく何か、何でもいいから見つけられるといいな…と思います。
おわりに
最後に、この本を読んで私が感じたことを素直に、率直にまとめます。
- 私自身の推し活とリンクし、とても平常心では読めない物語だった
- 推しを自身の背骨にしている危うさ、自分の全部を推しに預ける怖さは計り知れない
- 作中に登場するあかりのブログはとても魅力的なものなのに、それも推しと一緒に消えてしまうのかな…切ない。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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