『君の心に火がついて』こちらは漫画です。
これまで漫画を取り上げることはなかったのですが、こちらはちゃんと感想を残したいと強く感じた一冊でした。
SNSなどで見かけるたびに絵がおしゃれで素敵!と感じていたのが読んだきっかけです。
うすうす抱いていた感情をくっきりと表現されていて、女性に限らずどんな方にも共感できるテーマではないかな。
- ツルリンゴスターさんの絵が好きで
- SNSで部分的に読んでいた大好きな漫画、全部通して読みたかったから
書籍情報・あらすじ
書籍の基本情報
書籍名 | 君の心に火がついて |
---|---|
著者名 | ツルリンゴスター |
出版社 | 株式会社KADOKAWA |
出版年月日 | 2022年5月26日 |
頁数 | 434ページ |
あらすじ
私の心を閉じ込めていたのは”無自覚の私”――夫婦のすれ違い、男女の恋愛に違和感を持つ女子高生、60歳からの新しい恋、男子高校生のメイクなど「常識」から外れてしまうから、大切な人をこれ以上傷つけないために私が我慢すれば…と、自分の気持ちに蓋をしてきた主人公たち。
引用:KADOKAWA 書籍詳細ページ
そこへ、人間の心に灯る“火”を食べて生きる妖怪・焔(ほむら)が突然現れては、心の中に灯る小さな火を見つけ、変化を生み出していく8つの物語。
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本を読んだ感想
男女の対立を描いたものではない
本を開くと、ワンオペ育児に悩む妻・つむぎと、その夫・一哉の物語から始まります。
これだけ聞くと、よくある夫婦間の葛藤の姿ですよね。
一人で家のことや育児を頑張る妻と、仕事ばかりで家事育児を任せきりの夫。
人の心にある炎を吸って生きる「焔(ほむら)」は、つむぎがその炎をどう育てていくか見守ります。
私にはあなたが納得するために
引用:『君の心に火がついて』
言葉を尽くして説明してあげる義務はないのよ
この台詞、グサッと突き刺さるような強い響きですね。
何かを伝えようとするときに「知りたい」「理解したい」という姿勢で相手が聞いてくれる場合と、そうでない場合。
後者の場合は、残念ながらいくら言葉を尽くしても届かないですものね。
しかも、なぜ苦しむ側が努力して歩み寄らなければならないのでしょう。ハッとさせられる台詞です。
私自身は、こうして誰かを諦めさせてしまったことはないだろうか?
上記の台詞に共感しながら、同時にこんなふうにぞっとさせられる怖い言葉でした。
物語の中では、最初こそ「思考停止」していた一哉も、つむぎの変化に伴って自分を見つめ直すようになります。
これまでの自分の言動を振り返り、パワハラを受け仕事を辞めることになった同僚と会い、自分がどうしたらいいのか考え始める一哉。
無意識に他人に強いていた考え、それを変えたくないのは自分にとって都合がいいから…
これを認めて受け入れるってとても苦しいことだと思うのですが、彼は混乱しながら、苦しみながらも受け入れて変わろうとします。
すごいです。ここで私は一哉のことが少し好きになりました。笑
彼が変わるきっかけとなった同僚は男性なのですが、この人が男性で本当によかったと思うのですよね。
というか…助言をしたのが男性でなかったら、果たして彼はちゃんと耳を傾けたでしょうか。
きっとまた話を軽く受け流すか抑えつけるようにして、これまで通りの固定観念を守るままだったのではないかと思うのです。
(それがまた彼のずるいところだけれど)
男性が作り出し、男性自身を縛りつけている苦しさを教えてもらい、別の側面からの視点を知ったからこそ変われたのだと思います。
そう、男性は男性で苦しいのですよね。
女性は女性で、男性は男性で、子どもは子どもで、大人は大人で…他にもいろいろ。
冒頭の夫婦間の問題にとどまらず、つむぎの言うように「社会全体の問題につながっている」。
別に男女を対立させたいわけでも、ましてや女性の立場から男性を責めたいわけでもありません。
この本にはたくさんの孤独と苦しさ、そしてそれを壊して誰もが自由になれれば、という優しい願いが詰まっていました。
相手の言葉をちゃんと聴いている?
相手の言葉をまっすぐ受け取るって、いつの間にこんなに難しいことになったのでしょうか。
本当の言葉で話してくれているのに、
「実は違うのでは?」「建前?」「言い訳?」
と、自分に都合のいいように解釈しようとしていることって、意識してみるとたくさんあります。
自分の理解の外にあることならなおさら、です。
この本に登場する言葉たちはまっすぐでキレがいいのに、優しいのです。
核心を伝えるためにとても慎重に選んだ言葉たちで作られていて、それを読んでいると、
こうやって紡がれる言葉たちをこのまままっすぐ受け取りたいと感じます。
私たちはもっと、自分の発する言葉にも、相手の発する言葉にも真摯な姿勢でいるべきではないかな?
絵はもちろん登場する言葉も全て素敵なので、これから読むあなたにもそれらをまるごと受けとってほしいと思います。
わからない、でも考え続けて
読み進めるにつれて、私の中には「わからない」が増えていきます。
恋愛感情がないなんてわからない、結婚しない家族があるなんてわからない…私の知っている幸せの形と違う、とか。
でも、私がわかるかどうかにかかわらず、それは「ある」のです。
わからないけれどそれを受け止めたいし、できればわかりたい。
自分の生活や考えから遠いから理解できない、理解できないから「無い」とするなんて、傲慢でとても冷たいことですね…
わかりたいけれど、本当の意味で「わかる」ことなんてあるのかな?
わかったと思うこと自体、ちょっと傲慢かもしれない…そうとまで思ってしまいます。
わからないけれど、それについて考え続け、尊重する。
優しいってどういうこと?と混乱したとき、このことを思い出せたら少し光になるのではないかな。
憧れる友情のかたち
本の後半に、女性3人の友情が描かれています。
それぞれの家族や恋愛が主軸ではありますが、私はこの3人の姿になんだか憧れてしまいました。
きっと長く同じ時間を共有してきて、それぞれの家族の形が変わったり、幸せでない時期があったり、それも受け止めて支え合ってきたのですよね。
若いときから今までの自分を知っていて、幸せなときも落ちているときもお互いを見守っている。
私にも親しい友人がいますが、よく考えたら彼女たちは夫よりも、もしかしたら地元の家族よりも長い時間一緒にいるかもしれません。
こんなふうにいつまでも近況を知らせ合い、たまに食事に行くような穏やかな関係って本当に大切。
いつも何かの役割に追われてしまう大人の世界で、つるんとした丸腰の自分でいられそうです。
いい歳の大人になった私は、改めてそう思うのでした。
おわりに
最後に、この本を読んで私が感じたことを素直に、率直にまとめます。
- 自分の中にある違和感、本心を無視したくない
- 優しくあるって本当に難しい…相手の苦しみや痛みを、わかったつもりになりたくない
- 他人を許して、自分を許して。もっと自由でいていいのかも
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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